ホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性進行乳癌に対する1次治療 2022.09.10(Sat) No.3506 ホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性進行乳癌に対する1次治療として、CDK4/6阻害薬アベマシクリブと非ステロイド型アロマターゼ阻害薬(AI)の併用が、非ステロイド型AI単剤よりも全生存期間(OS)の延長傾向が認められることが明らかとなった。フェーズ3試験であるMONARCH3試験の2回目のOSの中間解析の結果示された。OSは12カ月以上延長していた。9月9日から13日にフランス・パリで開催されている欧州臨床腫瘍学会(ESMO 2022)で、米Mayo ClinicのM.P. Goetz氏が発表した。 MONARCH3試験は、世界規模で実施されている二重盲検プラセボ対照フェーズ3試験。閉経後ホルモン受容体陽性HER2陰性進行乳癌患者で、進行癌に対する全身療法を受けたことのない患者を対象に、最初の内分泌療法として非ステロイド型アロマターゼ阻害薬とアベマシクリブの併用投与の有効性と安全性を評価した。 2014年11月から2015年11月までに22カ国493人が登録され、1日2回アベマシクリブ150mgと1日1回AI(アナスロトゾール1mgまたはレトロゾール2.5mg)を経口投与する群(アベマシクリブ群)と、プラセボとAIを併用投与する群(プラセボ群)に2対1に無作為に割りつけられた。 試験の結果、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)は、アベマシクリブ群で有意に延長することが既に報告されていた。 今回発表されたのは、2回目のOSの中間解析(データカットオフは2021年7月2日)の結果。観察期間中央値は5.8年だった。OSの中央値は、ITTにおいてアベマシクリブ群が67.1カ月、プラセボ群が54.5カ月で12.6カ月の差があり、ハザード比0.754(95%信頼区間:0.584-0.974)、p=0.0301だった。カプランマイヤー曲線は24カ月目頃から離れ始め、その先は開きつつあった。なおプラセボ群の31.5%、アベマシクリブ群の10.1%が後治療でCDK4/6阻害薬の投与を受けていた。事前に規定されたOSのサブグループ解析は、概してアベマシクリブ群が優位だった。 内臓転移を有していた患者におけるOS中央値は、アベマシクリブ群が65.1カ月、プラセボ群が48.8カ月で、16.3カ月の差がありハザード比0.708(95%信頼区間:0.508-0.985)、p=0.0392だった。カプランマイヤー曲線は24カ月目頃に交差し、その後は差が開きつつあった。ITT、内臓転移を有していた患者のどちらも、p値は統計学的に有意となる水準には到達していなかったが、12カ月以上のOS延長が認められた。OSの最終解析に向けて観察は継続されている。 ITTにおけるアップデートされたPFSの結果、中央値はアベマシクリブ群が29.0カ月、プラセボ群が14.8カ月、ハザード比0.518(95%信頼区間:0.415-0.648)だった。5年PFS率はアベマシクリブ群が26.7%、プラセボ群が9.6%だった。 ITTにおける化学療法を受けずに生存している期間中央値は、アベマシクリブ群が46.7カ月、プラセボ群が30.6カ月で16.1カ月の差があり、ハザード比0.636(95%信頼区間:0.505-0.801)だった。 なお、長期間の観察で安全性に関する新たな問題は認められなかった。