ファイザー社の COVID-19 経口治療薬パクスロビド
- 2022.02.26(Sat)
- No.3499
ファイザー社の COVID-19 経口治療薬パクスロビド (Nirmatrelvir/Ritonavir) は、高リスク COVID-19 症例の入院および死亡リスクを89%軽減 。
"Oral Nirmatrelvir for High-Risk, Nonhospitalized Adults with Covid-19."
DOI: 10.1056/NEJMoa2118542
SARS-CoV-2は、複製中に長いポリペプチドを合成し、これをメインプロテアーゼ(Mpro)で切断してウイルスの構成タンパク質とする。Nirmatrelvir はこの Mpro の働きを阻害し、抗ウイルス効果を発現する。Nirmatrelvir は主にシトクロムP450 3A4 (CYP3A4) で代謝されるが、CYP3A4 阻害剤である ritonavir を nirmatrelvir と併用投与すると、nirmatrelvir の高い血中濃度が維持される。
有症状、非ワクチン接種、入院していない、重症化因子を有する COVID-19 症例2,246例を対象に、nirmatrelvir + ritonavir の有効性を確認する phase 2–3 double-blind randomized controlled trial が行われた。Nirmatrelvir + ritonavir あるいはプラセボが、12時間毎に5日間経口投与された。主観察項目は、投与後28日間におけるあらゆる原因の入院あるいは死亡とした。副観察項目は、ウイルス量と安全性とした。
● 2,246例の年齢中央値は46歳、男性は51.1%、発症から3日以内での治療開始は66.3%、抗体療法を受けていないものは93.%だった。2,246例は nirmatrelvir + ritonavir 群1,120例、プラセボ群1,126例に無作為化された。
● 発症から3日以内の治療開始で、抗体療法を受けていない1,379例を、有効性確認の intention-to-treat population とした (nirmatrelvir + ritonavir 群697例、プラセボ群682例)。投与後28日間におけるあらゆる原因の入院あるいは死亡は、nirmatrelvir + ritonavir 群5例 (0.72%)、プラセボ群44例 (6.45%)、nirmatrelvir + ritonavir 群が有意に低率だった (P<0.001、相対リスク減少88.9%)。死亡例は、nirmatrelvir + ritonavir 群で認めず、プラセボ群は9例だった。
● Intention-to-treat population における治療開始5日目のウイルス量は、プラセボ群と比較して nirmatrelvir + ritonavir 群で0.868±0.105 log10 copies per milliliter (P<0.001) 低値だった。
● 治療期間中の全有害事象頻度は nirmatrelvir + ritonavir 群22.6% vs プラセボ群23.9%、重篤有害事象頻度は1.6% vs 6.6%、投与中断原因となった有害事象頻度は2.1% vs 4.2%だった。プラセボ群と比較して nirmatrelvir + ritonavir 群で高率の有害事象は、味覚障害 (5.6% vs 0.3%) と下痢 (3.1% vs 1.6%) だった。