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言いたい放題乳腺外科コラム

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パンデミック下でのがん診療における状況と課題
  • 2020.03.26(Thu)
  • No.3237

パンデミック下でのがん診療における状況と課題に関する論説 。
"Managing Cancer Care During the COVID-19 Pandemic: Agility and Collaboration Toward a Common Goal."
COVID-19感染例が米国で最初に確認されたのは、2020年1月20日のワシントン州スノホミッシュ郡でのことである。2020年3月14日現在、ワシントン州ではCOVID-19感染例は642例で、40名が死亡した。米国は医療資源が豊富で、がん患者に最先端医療を提供してきた。しかし、COVID-19のパンデミックにより、医療資源が不足する事態が現実のものとなった。疾患やわれわれが提供する治療により免疫抑制状態にある患者にとって、COVID-19は脅威である。免疫抑制状態患者でのデータは限定的だが、非がん患者と比較して、人工呼吸 / ICUへの入院 / 死亡のリスクが3.5倍であることが中国から報告された。現時点でわれわれのCOVID-19感染がん患者は少ないが、状況は流動的である。医療資源の不足やがん治療によるリスクの増加が予想され、がん治療に際して困難な決断が必要となっている。われわれが直面している課題は、われわれの包括的目的とも一致する必要があり、それは必要とする患者に安全かつ公正にがん治療の提供を継続することである。
●初期準備
最初のステップの目的は強力な感染対策と環境制御である。呼吸器症状のある患者のトリアージは、他の患者やスタッフへの曝露を減らすために重要となる。 呼吸器症状のある患者の早期識別は呼吸器ウイルスシーズン中では日常的に実施されるが、われわれの施設ではすべての患者、訪問者、およびスタッフに対する症状スクリーニングが外来クリニックや病院に入る前に行うこととした。有症状患者は、COVID-19検査のため、別の場所に設置された二次スクリーニング領域に送られる。有症状者が施設へ入るにはCOVID 19検査基準を満たす必要があり、迅速にCOVID-19テストを行うことができるシアトルは幸運である
感染予防には患者と家族に対する多様な教育も必要となる。外来クリニックでの曝露を最小限に抑え、患者の救急科受診を回避するため、患者向けの配布資料、地域住民向けの電話トリアージを迅速に設置した。
「病気のときは家にいる」というポリシーの徹底と、有症状スタッフに対するCOVID-19検査の実施が、ウイルス暴露を避ける鍵となる。スタッフに対するCOVID-19検査、結果の追跡、暴露経緯の調査、職場復帰基準の確立は、安定した医療体制を維持するため不可欠である。個人用防護具 personal protective equipment (PPE) の適切な使用を含むガイドラインを、素早くアクセスできる単一のwebページにまとめる必要がある。その他の感染コントロール対策としては、旅行の制限や在宅勤務などが含まれる。
感染コントロールと同時に、急速に変化する情報を管理するために組織全体の体制確立が不可欠である。スタッフ、患者、および地域社会に提供されるすべての情報を集約化する「インシデントコマンド」組織を構築することが必要である。明確で一貫した情報発信にはリーダーシップを備えるバーチャル庁舎が重要となる。感染対策の調整と支援のため、病院外に地域医療機関などとの共有ポータルサイトを立ち上げた。
初期段階では予期しない問題への柔軟な対応が重要となる。リーダーは、感染対策システムの弱点、知識のギャップ、懸念事項を特定する必要がある。基本的危機管理体制、リーダーシップ、予防と情報伝達のための戦略の確立は、継続的ケア戦略の開発に重要である。
●外来診療における考慮事項
われわれの病院は地域外から多くの紹介患者を受け入れており、COVID-19感染拡大に伴いこれら地域外患者へのウイルス暴露を危惧した。さらに、学校閉鎖を原因とするスタッフ不足は、医療現場の人員配置に大きな制限をもたらした。当初の優先事項の一つは、スタッフの検疫隔離に備えるカバー制度の確立だった。続いて、医療およびオペレーション・リーダーは、通院患者の定期診察の調整と遠隔医療への移行を決定した。われわれは、迅速な医師の資格認定・トレーニング・規則変更をおこない、遠隔医療への取り組みを急速に拡大している。セカンドオピニオンの受け入れは中止した。また、高度な医療を必要とする感染者に救急部門と病院リソースを確保するため、診療時間を延長し緊急検査態勢を充実させた。
●治療決定
外来業務変更により業務上の課題をもたらすが、その対応は比較的容易である。より難しい問題は、化学療法を受けている、またはこれから開始しようとしている患者の治療の遅延に関する臨床上の決定である。固形がん患者では、治療中にCOVID-19感染の脅威があっても、治癒を目的とするアジュバント療法をおこなわねばならない。転移性がん患者では、治療の遅れがパフォーマンスステータスの悪化や治療機会の減少につながる危険性がある。治療の遅延により症状緩和目的の入院が増え、入院患者のリソースをさらに圧迫することになる可能性がある。われわれの施設では、個人用防護具・人員配置・ベット数の制限より、がんの待機的手術が2週間禁止となっている。ホルモンレセプター陽性初期乳がんでは、術前ホルモン療法により手術を贈らせるなど、診療方針の変更が必要となっている。
高悪性度血液がんは幹細胞移植や細胞性免疫療法により治癒可能だが、治療には緊急性があり、遅らせることはできない。旅行禁止措置が同種幹細胞移植のための国際的なドナーへのアクセスを制限し、ドナー検体の凍結保存が推奨されるようになった。われわれの施設の腫瘍医チームは、免疫抑制の軽い治療法を選択して入院治療から外来治療へ移行している。
臨床試験への登録は、患者利益が最も高いと予想される試験に限定する必要がある。感染拡大状況で医療リソースが制限され、どのような患者に優先順位を与えるかは継続的な課題である。スタッフと患者の安全性が破綻しない限り、がんセンターは治療の門戸を可能な限り開き続けておくことを使命とすべきである。
●倫理的配慮
個々の患者診療を超え、腫瘍医は診療配分という厳しい現実に直面することになろう。パンデミックが進行すると、個別の患者に大量の医療資源を提供することは社会的利益と対立することになろう。進行がん患者や心臓や肺に基礎疾患を有するがん患者がCOVID-19に感染して人工呼吸器管理が必要となった場合、その予後は不良であることが予想される。武漢からの報告では、COVID-19に感染し、人工呼吸器管理が必要となった重症患者32人のうち、生存したのは1人だけだった。このような不確実な時期にがん患者が治療に関する決定に必要な情報を提供することは、われわれ医師の義務である。医療リソースが不足している時、有効な、あるいは症状を緩和する、あるいは救命の可能性が最も高い治療法を検討し、治療により最大の利益を得る可能性が高い患者を選別する必要がある。このような困難な決定に関する議論は、専門医グループ・医療倫理学者・緩和ケアチームの間で行われるべきである。われわれは、COVID-19に感染したがん患者に対して終末期緩和ケアについて積極的に話し合うことが不可欠と考える。
●病院管理
腫瘍病棟の優先事項は、急性期医療とICU管理を必要とするCOVID-19感染がん患者の急増に対して、ベットと医療資源の不足に備えることである。パンデミック期間中は病棟システム全体の再編成が必要となる場合がある。医療機関は血液製剤の不足に備え、輸血の適応を厳しくする必要がある。感染の可能性がある患者をクリニックから病院に移送するに際には、スタッフや一般の人々への接触を減らすための移送計画が必要である。ゲル消毒より石けんと水での手洗いの優先、病室への入室メンバー数制限など、個人用防護具を節約するため方策が必要となる。
医療スタッフを感染から守るため、個人用防護具のトレーニング方法を更新し、随時利用できるようにした。社会と患者を感染から守り、個人用防護具の消費を減らすため、臨終時などの特例を除き入院病棟への面会を禁止した。これらの決定は、家族や友人のサポートの重要性を認識している患者・家族・医療スタッフいずれにとっても困難なものだった。
●医療スタッフとリーダーの健康
医療スタッフの心身の健康には、積極的に注意する必要がある。 医療スタッフの燃えつきを予測し、最前線の医療スタッフの健康を保護し、安全な作業環境の確保を優先する必要がある。さらには、医療スタッフの休息と強制隔離に備えたバックアップ体制構築のため、人的資源を確保する必要がある。免疫能低下や重篤併存症のある医療スタッフに対しては、業務の再割り当てを検討する必要がある。
われわれは困難な診療業務とセルフケアの重要性を認識するための意識的努力を継続しており、実際、現場指揮官は休息確保のために2週間毎に交代している。
●今後の展望
COVID-19のパンデミックは、がんセンターに課題と学習の機会をもたらした。パンデミック状況の将来は不確実で、われわれはその広範な影響に備える準備を続けなければならない。状況は流動的で、対策と推奨事項は随時変更の可能性がある。COVID-19による医療危機は進行を続けており、新しい状況により既存の推奨事項が変わる可能性がある。われわれはこの不確実な時期を乗り切ることを期待するが、長期的な財政的・感情的な下振れは将来の課題となるだろう。しかし、最重要目標は、がん患者に思いやりのある安全なケアを提供し続けることである。われわれはがん患者とそのコミュニティへの情報提供の継続を希望している。今回のパンデミックは現在のヘルスケアにおける課題であり、近代がん治療がこれまで直面することがなかった問題である。われわれはパンデミックに打ち勝ち、パンデミックが終焉したとき、人類の危機的な瞬間に患者のため、そして互いのためにわれわれがなし得たことを誇りに思うことであろう。